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備忘録、偶感

【備忘録】伊豆の自宅の整理をしてゐる。伊豆での執筆生活の頻度をあげる為だ。今朝は源氏を読んだ後、ずつと家の片づけ。20年来の混乱と苦闘――。もう打ち止めにして「私の仕事」に静かに打ち込みたい。この年末の二ヶ月、あらゆる意味でゴミを片付け、汚れを拭きとる。
これから『東京の人』について。マレックの好著『ワグナーの妻コジマ』。ベームの《トリスタン》一幕。

【偶感】今、短いものだが川端康成『東京の人』を論じる仕事に入つてゐる。これは日本近代を代表する大小説だ。川端を詩人と見做し、このやうな本格小説を「風俗小説」として蔑視する文学史的通説は完全に誤つてゐる。例へば漱石の『明暗』、有島武郎『ある女』などとは比較にならぬ優れた小説だし、谷崎潤一郎『細雪』と較べても、風俗の生き生きとした様や自在な豊かさがあつて、それでゐて人間の業を描きぬく苛烈さがある。埋もれた傑作といふ言ひ方では足りない。
私は、小林に始まる日本近代批評の子だし、その大きな成果を愛してゐるが、奇妙なことに日本近代批評の最大の盲点は自国の同時代文学の評価にある。万葉、芭蕉を始め古典やドストやジイドを始めとする西洋藝術に関する優れた批評文学はあるのに、日本近代文学は全くきちんと扱へてゐない。
近代文学史は文学思潮史であつて、傑作の歴史ではない。五重塔や布団や伊豆の踊子は暗記させられるのに、家や連環記や山の音は誰も知らない。その弊が、東京の人を全く評価できないまま埋もれさせるといふ大失態の原因だらう。
常識を取り戻せと言ひたい。文学史は傑作の歴史であるべき。私がやるからまあいいや。
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