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【密会】

ある大学の源氏物語の講座にこの春から通つてゐる。斯界の第一人者の女性の先生の授業で、宇治十帖。玉上琢也に個人レッスンを受けながら現代語訳をした谷崎や円地の先例に倣ふなどと大それた話ではない。愉しみで通つてゐるだけだ。宇治十帖だから、当然薫や匂宮の「密会」がテーマなわけだが、その関連で源氏が藤壺に「密会」する話になつたところで、先生が「つまらない事ですが…」とこんな話をされた。
「源氏を長年読んでゐて、源氏と藤壺の「密会」などと授業ではいつも話をしてきたのですが、昨年、どなたか政治家の方がホテルで「密会」といふ事が話題になつた時がありましたね。そのテレビを見ながら、ああ、密会といふのは源氏物語のやうな世界だけの事だと思つてゐたら、現実に今の世の中でも「密会」などといふ事があるんだと驚きました」
 既に退官されてゐる先生だが乙女心を失はずに源氏研究一途に過ごされた方なのだと、少し床しい可笑し味を感じました。源氏は密会といふより密通ですが。いや、その「どなたか政治家の方」も密通か。いや、ホテルでは政策の打合せをしてゐただけで同衾の事実は断じてないと宣うてゐたから密通でも密会でもなく、業務か。「業務」前の車中の顔が隠し撮りされ、それが余りにも艶やかで楽しげだつたのはよく覚えてゐる。うちの事務所で平よおと幾ら打合せをしても彼女はあんな顔はしてくれない。業務で女性をうつとりさせるにはまだ私の修行が足りないのであらう。源氏を読んで修行してゐるが、密会も密通もなかなか現実のものにはならない。人生は厳しい。
 ちなみに与謝野、谷崎、円地以下様々な現代語訳源氏があるが、角川文庫の玉上訳が日本語として最も優れてゐるのではないかな。小説の大家たちを差し置いて。
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