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【日本倫理思想史】

和辻の日本倫理思想史上をやっと読了した。とても物書きの読書ペースではなく、この多忙には閉口するが、大変な名著だ。会田弘継氏の訳されたカークの『保守主義の精神』に継ぎ、一層深く私の仕事を支える土台となるだらう。
和辻は、日本人の倫理観が尊皇を通じて成熟、確立した事、その後それがそれぞれの時代にどう織り込まれ、展開してきたかを精密に語っている。和辻の仕事の中でもとりわけ重要だと思うが、岩波文化人としての和辻の位置から、あちら側はこの業績を可能な限り隠蔽し続け、保守側も岩波文化人という事で重視してこなかった憾みが強い。和辻がこの「尊皇こそ日本の倫理の中核だ」との本を岩波から出したのは昭和26年12月、独立直前だ。要するに大日本帝国が集約した天皇伝統観は歴史的に見て概ね正しかった、それを新日本が崩してはならないという、大正文化人であるはずの和辻渾身の反時代的保守反動の研究書だったわけだ。それをその頃まさに赤化の中心だった岩波から出す、党派心のない、誠のある実に偉い人だったと思う。
逆に、現代は、実証研究の名のもとに天皇の相対化を進め、そういう中で一つ一つの形式論理、特に明治時代に定めた事で国の重しとなった「新たな天皇伝統」を崩してゆこうとしている。まさに和辻の危惧が70年後決定的な形で今皇室を襲っている。無自覚な者も多数いれば、便宜主義者の官僚や言論人(保守も含め)、新しがりだけの軽薄な学者、天皇制度を解体したい左翼、宮中やマスコミの新天皇軽視派などが錯綜してこの状況が進む事をどう阻止するかは、日本の存亡の限界を画する事になるだろう。
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